現場の声

ADOCを利用しているリハビリ現場の声

1. 10年おでん

日赤那覇市安謝福祉総合施設
作業療法士 饒平名亜紀子

私が初めてADOCを使った時のことです。それまで10年間歩行訓練ばかり行っていたホーム入所者がADOCのイラストを眺めながら「おでんが作りたい」と話してくれました。おでん屋の女将だったことは皆知っていましたが、今でもその気持ちを持ち続けているとは誰も知りませんでした。ケアマネや管理栄養士に相談したところ、施設内でいつの間にか「おでんプロジェクト」が立ち上がり,「おでん屋」が開かれました。10年間の想いが染み込んだおでんを振舞う彼女の姿は女将そのものでした。「あの頃に戻ったみたい」と娘さん、女将も「次は沖縄そばが作りたい」と意欲的です。また忙しくなりそうですが(笑)、おかげさまで私にとっても充実した毎日です。

2. 内なる思い

太田熱海病院
作業療法士 齋藤佑樹

言葉での意思疎通が全く取れなかった失語症のクライエント。どのような介入をすればよいか手がかりが欲しい時にADOCを使用したところ、本人がとても大切にされていた活動(ヨガ、写真撮影、ラジオを聞く、温泉に入る等) を知ることができました。その日から、ラジオのチューニングの練習や、片手での写真撮影の練習など、やりたい活動の実現に向けて具体的な介入が始まりました。以前から馴染みのあるその人らしい活動を一生懸命練習する姿をみた ご家族も、不安だった自宅退院に向けて動き出しました。ADOCは、クライエントの内なる思いを引き出し、その人らしさを取り戻すための効果的なツールだと思います。

3. ヒージャー

北中城若松病院
作業療法士 玉城希

臥床傾向にある重度認知症のクライエントにADOCを使ってみました。ADOCを使った後に、ヒージャー(やぎ)を食べながらビールが飲みたいと話してくれました。早速私は摂食担当の看護師と主治医に相談し、ノンアルコールビールを買いに走りました。本気で飲みたいものにはとろみ剤は必要無いみたいで、缶から上手に飲まれてほろ酔い気分(笑)。その後、本人、私、看護師、主治医で食堂にヒージャーを食べに行きました。普段は15分程度しか覚醒が持続しないのですが、その日は2時間以上も持続しました。その風景をビデオに収め、ご家族にも観てもらうととても喜んで、退院後に、本人、ご家族、私たちで一緒に外食しました。念願の本物のビールを飲まれていました。もちろんとろみ無し、しかしながら、これが本人とご家族との最後の外食だったようです。ご家族がそのご報告をかねて私たちに会いに来てくださいました。その人らしい作業って、きっといろんな人の結びつきも強くするんでしょうね。私にとっても生涯忘れられないクライエントになりました。